CINEMA INTERVIEW |
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SKYDRIVERS HIGH Vol.03「トーキョーシネマクラブ」開催記念! 堂島孝平×松尾清憲(シネマ) スペシャル対談 このインタビューは、堂島孝平FC「黄昏流星群」会報に掲載されたものをUPしました。 堂島ファンとともに、「トーキョーシネマクラブ」にむけての意気込みをお楽しみ下さい。 | |
松尾さんと僕の「浮き続ける美学」をぜひナマで観てほしい(笑)
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シネマ。この響きからみなさんはなにを連想されますか? セピアトーンのスラップスティックコメディ。総天然色の冒険活劇。夢の世界に誘ってくれるファンタジーetc.etc. そんな古きよき銀幕の世界をイメージさせてくれる「シネマ」という言葉をバンド名にしたPOPグループが、 25年前の日本に存在していました。その後ソロで活躍する松尾清憲さん、鈴木さえ子さんらが在籍した伝説のグループ 「シネマ」が四半世紀ぶりに再結成!堂島孝平 presents 「SKYDRIVERS HIGH Vol.03」に登場します。 「SKYDRIVERS HIGH」にはこれまで、小坂忠さん、佐野元春さん(番外編で杉真理[すぎまさみち]さん)といった、 堂島が敬愛するポップマスターたちが出演してきてくださいましたが、今回は、バンド!しかも再結成ライヴ! 以前から、シネマの「電話・電話・電話」をステージでカバーしていた堂島孝平。 今回はそのシネマのリーダー、解散後は、ソロとして、またBOX、ピカデリーサーカスの一員として、作曲家として 活躍されている松尾清憲さんをお迎えして、2006年10月1日に開催される「SKYDRIVERS HIGH Vol.03」に向けて “スペシャル対談”をお届けします。ちなみに会場は、「シネマ」にちなんで、鶯谷の東京キネマ倶楽部を選びました。 一夜限りの「トーキョーシネマクラブ」が幕を開けます! 【トミナガ(堂島孝平マネージャー)】 | |
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堂島(以下:堂) 松尾さんがシネマで活動されていた頃、僕は5才ですから、リアルタイムで聴くのは不可能に近いんですけど、 きっかけは……最初は杉(真理)さまですね。 松尾(以下:松) そうそう。杉さま(笑)。 堂 僕の記憶では、初めてお会いしたのは、杉さんの誕生パーティー、かな。 松 そう。飲み会ですね。 堂 その日、僕は杉さんに会いに行くだけでも緊張していたのに、行ってみたら松尾さんもいる、というので、 非常に緊張したことを覚えています。 松 そんなふうには見えなかったけどね。 堂 緊張してたんですよ。松尾さんにお会いしたのはそれが初めてだったんですけど、シネマの音楽を初めて聴いたのは、 マネージャーの(冨永)周平さんのおかげです。僕もこの年令では邦楽に詳しいほうだと思っていたんだけど、 周平さんはもっと詳しいから、いろいろ教えてくれるんです。普段は情報として教えてくれるんだけど、 シネマについて語るときだけはやたらに熱っぽいんですよ。ものすごく熱っぽく語ってたんです(笑)。 周平さんがそんなに熱っぽく語るなら……。 松 そんなに熱っぽかったの? 風邪ひいてたんじゃない?(笑) 堂 で、聴いてみたら驚きました。開けてビックリ、という感じで。 松 それじゃ玉手箱だよ。お爺さんになっちゃう(笑)。 堂 聴いてみたら、これがすごい。1曲の中にいろいろ展開があって、アレンジも気が利いていて、音数も多い。 普通はこれだけたくさんの音が入っていたらヌケが悪くなるはずなんですけど、シネマはとにかくヌケがいい。 そこにシビレました。それ以来、ことあるごとに“電話・電話・電話・電話・電話・電話”(「電話・電話・電話」)って 歌っています(笑)。 松 ことあるごとに? それはすごいね(笑)。 堂 それが4年くらい前の話ですね。それ以来、ことあるごとに(笑)。 松 僕も杉さま経由ですね。杉さま、顔が広いから(笑)。で、飲み会で初めて会って、そのときに手渡されたCDも聴かせてもらったし、 その後の杉くんとのジョイント・ライヴ(歌暦Vol.7弥生「杉真理×堂島孝平 3-2-1 GO!」2004/03/21 クラブチッタ川崎)も観ました。 あのときに歌っていた「45℃」という曲が耳に残って、すごく面白い曲だな、と思った。 堂 ありがとうございます。 松 大滝(詠一)さん、佐野(元春)くん、杉くんという、いわゆるナイアガラ系の流れを受け継ぐ若いミュージシャンって 少ないから、堂島くんは貴重な存在ですよ。しかも堂島くんは他の要素も持っているし、 歌詞やアレンジのセンスも新しい世代のものだから、面白いなあ、と思っていました。 堂 いや、松尾さんにそんなふうに言っていただくと……ありがとうございます。 松 アルバムのレベルも高い。新作『SMILES』の1曲目(「スマイリンブギ」)はビッグ・バンド風のアレンジなんだけど、 シネマもアルバムの1曲目「スイッチ・オン(Let's Show Begin)」で似たようなことをやっていて、エンディングのコードも似ている(笑)。 堂 あれを25年も前にやっている、というのはすごいことだと思います。 松 僕もビッグ・バンドのサウンドが好きなんですよ。だから、けっこう通じるところがあるんじゃないかと思ったんだ、 あの曲を聴いて。 堂 僕もビッグ・バンド構想は以前からあったんです。でも、どうしてそれが1曲目なのか、自分でもよくわからなかったんだけど、 シネマだったんですね。今回、対談させていただく、ということで改めて聴いてみたら、「あ、これか」と(笑)。 松 いいんだよね、ビッグ・バンド。 堂 素敵な始まり感(笑)がありますよね。 松 そう。ハリウッド的とでも言うのかな? 松尾清憲の音楽って、ブリティッシュ・ポップのイメージで語られることが多いけど、 実はハリウッド的な音楽も大好きなんです。 ムーンライダーズやYMOの畑の人だと思われがちなんだけど(シネマのプロデューサーはムーンライダーズの鈴木慶一さん)、 実際にはナイアガラ系の音楽も好きだし、両方に足を突っ込みながら、どちらにも属していない、という感じでやってきたところがある。 ブリティッシュとハリウッドも同じですね。 両方の良いところを吸収して、自分の中では混合してるわけだけど、どちらにも所属はしていない、という感覚。 堂 ああ、僕もわかります、その感覚。 松 だから映画的なんだろうね。堂島くんにも映像的な曲があるし、そういった意味でも共通点があるな、と思ってる。 堂 松尾さんの音楽は本当に映画的ですよ。曲の中にドラマがある。ドラマティックなんですよ。 今の若い人たちこそ聴く価値がある音楽だと思います。鑑定団の人の言い方を借りれば「いい仕事しますね」という感じ。 しかも先鋭的ですからね。いい仕事しながら勝負している、というところが偉大だな、と思います。 言い換えれば、常套句で終わらせるところがない。そういうことをやり続けるのが如何に大変なことか、というのは 作り手のひとりとしてよくわかっているので、僕はそこにシビレます。 松 そういうことが好きなんだろうね。いい仕事するのが好きなんだよ、きっと(笑)。堂島くんもそうでしょ? 堂 そうですけど、大変ですよね、ずっと続けるのは。 松 そういうところにも共通するものがあるんだね。 堂 僕にとって松尾さんは自分にないものをいっぱい持っている人です。聴いていると刺激されるんです。 「こういう展開もアリなのか」と思うことが多い。メロディ・ラインでも、コード進行でも。 共通点があるから感じられるのかもしれないけど、発見が多いんですよ、松尾さんの音楽って。 松 ポップス系のアーティストって、色気が足りないと思うことが多いんですよ。 だけど、堂島くんのヴォーカルは色気があるんだよね。ジョイント・ライヴのときに聴いていて、杉くんとは違う色気があるな、と思った。 堂 うれしいですね。ここ2年くらいのテーマなんですよ、色気が。 松 色気って大事だと思うんですよ、僕は。 堂 だけど、色気といえば、松尾さんのヴォーカルの色気は抜群ですよ。他の人とは比較にならないくらい色っぽい。 松 そういったところを追求していたんだろうね、昔から。80年代初頭、僕らはニュー・ウェイヴの一派だと思われていたんだけど、 それで損をしたところもあるのかもしれない。実際の僕らはポップとか色気を追求していたわけだから(笑)。 堂 さっき松尾さんも言われたように、どこにも属さない感覚がありますよね、松尾さんには。 属せないわけじゃなくて、敢えて属さない。異質であり続ける意志があると思います。僕もデビューして12年目になるんですけど、 ジャンルとかシーンとかで括られても、いつも違うなあ、と思うし、どこにも属せないし、自分でも属したくないと思ってる。 僕はそれを「浮き続ける美学」って呼んでるんですけど(笑)。 松 あ、それは似ているかも。意外と大事なことだと思う。 堂 だから僕が松尾さんにシビれるのも、それがあるからかもしれません。「浮き続ける美学」でずっとやり続けている そのタフなところに惹かれるのかも。 松 ジャンルに入ったほうが楽なのかもしれないけど、なんか嫌なんだよね。 「特定のジャンルが嫌い」とか「ジャンルに属している人が嫌い」とかいうわけではなくて、 どこかのジャンルに属している自分が嫌い(笑)。 堂 そうそう。僕もわかります、その気持ち。 「黄昏流星群」編集部(以下:編) はたから見ていると、おふたりとも「老舗の和菓子屋の頑固オヤジ」みたいですね。 自分が作る和菓子の品質や独創性にこだわる職人気質の頑固オヤジに似ています(笑)。 松 僕、職人が好きなんですよ。ミュージシャンじゃなければ職人になりたい。和菓子屋もいいけど、 できれば壁画の修復作業をやってみたい(笑)。 堂 僕は考古学者になって、ずっと発掘作業をしていたい(笑)。 松 僕もそう。そっちのタイプなんだね、ふたりとも。 傍からは「なんだ、あいつ」とか言われながらもマイペースで地道にコツコツとやっていくタイプ(笑)。 堂 人が嫌がる細かい作業や同じ作業の繰り返しが苦にならないタイプ(笑)。 ただ、最近は作り込み過ぎないようにするのがテーマのひとつだったので、音楽作りでは職人的な技巧に走り過ぎないようにしていますね。 テクニカルな方向に走り過ぎてしまうと、音楽の熱気が冷めてしまうから。そこら辺のジャッジも松尾さんは上手いですよね。 松 まあ、シネマについて言えば、けっこうライヴをやってたのが良かったんですね、きっと。 レコーディングのためのアレンジじゃなくて、ライヴで曲を育てられたから、熱気が冷めない状態でレコーディングできたんじゃないかな。 こないだの再結成ライヴ(「SHINJUKU LOFT 30TH ANNIVERSARY “ROCK OF AGES 2006”」2006/04/15新宿ロフト)でも、 やる前に考えていたよりも楽しくできましたね。みんな、それぞれに今でも音楽の世界で現役だったからできたんだと思います。 で、一度だけで終わるはずだったんだけど、皆さんのご厚意により二度目もある、ということで、非常に有り難いですね。 メンバーも、こないだのライヴの感触がよかったので、もう少しやりたいな、と思っていたみたい(笑)。 堂 僕は大変な役目だと思っています。これはもう新庄のパフォーマンスみたいなものですから、 「やります」って言ってしまったら、結果を出さなきゃいけない。 松尾さんをはじめ、シネマの皆さんにも満足していただけるライヴにしなきゃいけないし、 シネマを観に来られるファンの皆さんにも満足していただけるライヴにしなきゃいけないし、 さらに堂島孝平のこともちゃんと伝えなきゃいけない。それから、自分にとっては裏勉強会でもあるんです。 大先輩と一緒にやらせていただくことで、しかも今回はバンドでお迎えするわけですから、うちのバンドのメンバーも含めて、 いろいろ学ぶことが多いんじゃないかと期待しています。 松 僕らも刺激になるんじゃないかと思います。楽しみですね。 編 ステージが横に長いので10人分の楽器をセットできるそうです。 松 それはすごいなあ。ツイン・ドラムにツイン・ベース?(笑) 堂 いや、でも、シネマの皆さんと一緒に演奏するのはプレッシャーですよ。 松 僕らのほうがプレッシャーだよ。まだ1回しかライヴやってないんだから。 編 松尾さんと堂島くんのハーモニーをライヴで聴いてみたいですね。 松 僕も楽しみです。でも、やってみないとわからないんだよな、あれは。 堂 楽しみだけど、どんなふうになるのか、僕もわからない。 編 楽しみですね。これが縁で共作なんてことにもなったりして。 堂 またそうやって新たな課題を(笑)。 松 杉くんとは共作しているもんね、すでに(「GOOD NEWS」「君のParadise」をクラブチッタで披露)。 堂 やりました。ふたりきりで部屋に閉じ込められて(笑)。物凄いプレッシャーなんですよ。 目の前に本物の杉真理さんがいて、「じゃあ僕はサビを考えるから、堂島くんは30分以内にBメロ作っておいて」なんて言われたら、 僕はいったいどうしたらいいんですか? あれはもうシゴキでした(笑)。松尾さんとだったら、また別の緊張をすると思う。 松 いやいや、大丈夫ですよ。イジメたりしないから(笑)。 堂 大先輩ですからね。やっぱり緊張しますよ。 松 だけど、いろいろな人と一緒にやる、というのは面白いよね。堂島くんと杉くんが一緒にやったライヴでも、 ふたりは似ているんじゃないかと思って観に行ったら、全然違っていたので面白かった。 お互いに相手の曲を歌ったりするのを聴いていたら、コードの展開も違うし、ヴォーカルのタッチも違うことを発見して、刺激的でした。 だから、今度のライヴでも、そういった発見があるんじゃないか、と思います。 堂 僕らの秘密が見られるライヴになるような気がしますね。 どうしてこういうふうになるのだろう、という秘密が見える瞬間があると思うんです。それが楽しみですね。 それから、松尾さんと僕の「浮き続ける美学」をぜひナマで観て欲しい(笑)。 松 音楽には王道なんてないんですよ。たとえばビートルズだって、マニアックなものが結果的に王道になってしまっただけで、 本来はマニアックなものなんです。音楽なんて本当は何でもアリなんだから、それぞれが自分なりの楽しみ方を見つければ、 それでいいんですよ。 今度のライヴでは僕も自分なりの楽しみ方で大いに楽しみたいと思っているし、 観に来てくれる人たちにもそれぞれの楽しみ方で自由に楽しんで欲しい。 きっと誰もがそんなふうに楽しめるライヴになるはずだと思っています。 堂 すごく怖いけど、すごく楽しみです(笑)。 | |
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写真:坂本正郁
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